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STEAM

聖徳学園とSTEAM教育

一般的にSTEAM教育とは、S=Science、T=Technology、E=Engineering、A=Art、M=Mathematicsの5つの頭文字を合わせた言葉ですが、本校はSTEAM教育をやろうとしてやっているわけではありません。
本校独自の教育に名前がないから、もっとも分かりやすい「STEAM」という言葉を当てはめている、と言った方が正しいかもしれません。
ではその本校独自の教育とは何なのかを、ご説明しましょう。

「課題」から「作品」へ

学校での勉強と言えば「課題」がつきものでしたが、課題を介した学習は、生徒と先生の間の往復作業に終始してしまいます。そうなると生徒は、「先生に提出するためにやるもの」という意識が芽生えてしまいます。また、先生にしか見られないことが分かっていると、先生が求める形だけを重視し、「自分ごと」として考える機会を失ってしまうのです。

ではもし、その課題をYouTubeで公開するとなったらどうでしょうか。公開されたものを評価するのは先生だけでなく、友だち、家族、先輩・後輩、あるいは全世界の知らない人たちかもしれません。
せっかく多くの人たちに見せるのであれば、共感して欲しい、感動して欲しい、面白がって欲しいと思うでしょう。そうなると今までの課題をこなす作業に、見せる意識や工夫が加わります。その時、その課題は「作品(Art)」へと変わるのです。

本校は、学習の成果物は「作品」であるべきと考えます。「作品」は、さまざまな評価が与えられ、評価する人も基準もバラバラです。またピカソの言葉に「作者はしばしば自分で予期しなかった結果に驚かされる」とあるように、自分でさえ気づかなった発見を得られることもあります。「作品」の評価や振り返りを通して「次はもっといいものを作ろう」「あの時学んだことを取り入れてみよう」という気持ちを持つことこそが、発展的な学びではないでしょうか。

ICTはツールに過ぎない

一般的にSTEAM教育の中心となるのは情報科の授業です。情報科というとタイピングやExcelの使い方を習得するというイメージがあり「STEAM教育は、ICT技術を使いこなせるようになることですよね」と言われますが、これは大きな誤解です。

例えば、ほとんどの子どもが今やフリックで素早く文字入力ができますが、このフリックは誰かに習ったわけではありません。「打ちたいもの」があるから、それぞれが自分で習得していったのです。ICTも目的のためのツールにすぎません。言ってみれば辞書やノート、ペンと同じなのです。

教科にとらわれない学び

クレイアニメーション(映像制作)

作品づくりには、あらゆる教科の知識や発想が必要です。
例えば中1で制作したクレイ(粘土)アニメーションでは、シナリオを書くのは国語力が必要ですし、粘土を思うような形にするためには、美術だけでなく数学・化学・物理の視点も必要です。また映像にBGMをつけるとなれば音楽の教科に関わってきますし、音楽制作ソフトを使うのであれば情報科の力も借りなければなりません。

このように一編のクレイアニメーションを制作するために、当然のように教科横断型の学びを必要とします。しかしこれは教科横断型の授業をするために考えた取り組みではなく、やってみたら一つの教科だけでは成り立たなかった、というだけなのです。

Mars Game(文書作成)

文書作成も基本的な技能として必要ですが、ただ単にチラシを作成するだけでは発展性に欠けます。本校では、映画『オデッセイ』を題材にして、火星に取り残された宇宙飛行士を助けるか、助けないかをグループで話し合い、一つの声明文を作成するという切り口で文書作成の授業を実施しました。それぞれの立場を設定したロールプレイの要素も入りますし、ドキュメントの共同編集機能もここで使い方を覚え、他の場面で活用できます。

コンビニ経営シミュレーション(表計算)

ある商品の発注数をさまざまな条件から推測して利益の最大化を目指すという試みです。例えば、とあるコンビニでの1日のお茶の販売数をヒントとして与え、利益を最大化するためにはどれくらい発注すれば良いかを考えます。「利益」ですので、単に売り上げだけでなく収支まで考えなければなりません。またそのコンビニの立地や季節、曜日といった要因も判断材料となります。この取り組みは、「表とグラフを作成する」というシンプルな成果物のために、さまざまなケースを想定することを求めているのです。

動画で外国語学習

動画を撮影しながら会話をすると自動的に字幕がつけられるアプリを使って、外国語の教材を作ります。字幕の言語は選ぶことができ、英語だけでなくドイツ語、フランス語の教材を作ることもできます。最初は外国語での挨拶から始まりますが、フランス語の先生はいないので、Googleの翻訳機能を使って練習します。当然、発音が正しくないと字幕をつけることができないので、生徒は正しい発音を意識するようになります。こうして友達に見せる動画を介することで、「外国語は授業で教えてもらうもの」という既成概念が取り払われ、もっと気軽に学べることを知るのです。

授業のワンポイントレッスン動画

iMovieの動画合成機能を使い、天気予報のようなイメージで、板書を作成し、自分の動きと組み合わせて、授業のワンポイントレッスン動画を作ります。何の教科をレッスンするかは各生徒が選びますが、教えるとなれば当然その教科の理解を深めなければなりません。これだけで教科の復習となります。また30秒のワンポイントに収めるためには、撮影者、タイムキーパー、教師役など、役割を決めて協力し合う必要があります。完成作品は「試験前に活用したい」という各教科からニーズの多い動画となりました。

グアテマラへの講義動画

グアテマラの教育水準が低いという問題を前に、生徒が英語で講義動画を作ることになりました。果たしてそんなことができるのか?と思うかもしれませんが、これまでご紹介したように字幕を作成してくれるアプリがありますし、板書作成も習いました。iMovieで動画の合成もできます。つまり、一見困難に思えても、それに挑戦するためにいろいろな「武器」を提供し続けているのです。

常に進化し続ける教育

こういった取り組みは固定されているものではなく、毎年改定し、進化しています。むしろ、あらかじめ決まったことはほぼできないのです。
なぜなら、今のやり方がその次の年も最適かは分からないからです。たとえば動画制作のアプリがバージョンアップすれば、今までできなかったことができるようになり、新しいアイディアを与えられることもあります。

また、学年や教科がその時何を学んでいるかでテーマが決まることもあります。社会科で取り上げるテーマが、今まさに社会で起きていることであれば、毎年変化するのは当然のことです。

このように、今何を学んでいるか、その学年にはどのようなニーズがあるか、ICTはどう進化しているかを汲み取り、学習活動としてデザインするのが教員の仕事です。教員は、時々刻々と変化する世界の中で、子どもたちが「今」何に興味があるか、「今」何を学んで欲しいかを考えています。つまり教員も生徒と同じく学習者なのです。